乾隆皇帝が怒る、幻の薬方・烏梅のジュースですっきり解決
皇帝のダイエット
(酸梅湯@点心皇帝)
夏の風物詩、それは酸梅湯(サンメイタン)。
今でも老北京の街角では、
玉泉山的ー水来ー,東直門的ー氷ー。
喝的嘴里ー涼了ー,湯児好喝ー呀ー。
宮城の水と氷だぞー、冷たくっておいしいぞー
という酸梅湯売りの声が、、、、、しないようです。
老北京の酸梅屋さん |
最近では、炭酸系の清涼飲料水にすっかり押されて、
「せっかくの北京だし、名物の酸梅湯(サンメイタン)でも飲んでこ」
っと探してもどこで売ってるんだか、なかなか見つからなかった。
なんて話しもあるようで。
この手の伝統的なものは、むしろ台湾のほうがよく伝えているのかもしれません。
宋の国が遂に滅びました。
皇帝は船に乗って海の上を逃げ回りましたから、文字通り、宋は海にまで追い落とされたのです。
ところが実は、宋は南極に逃げ延びて秘密基地を作っていた。
なんてジャーマンナチスみたいな楽しい噂は、残念ながらありません。
実は皇帝は坊主になって生きていた、という噂だったらあるようですが。
中原は、北方の騎馬民族に占領されて、元の時代となりました。
北京のぐるりならそれなりに制圧されて落ち着いていましたが、江南地方は結構な混乱が続きました。
マルコ・ポーロが訪れた時には、杭州は既に100万都市でしたが、それはみんなで杭州に逃げて来たからです。
この混乱期に、林浄因命(りんじょういんのみこと)がお饅頭を持って日本に渡ってきましたが、そのお話しはまた別にいたします。
この混乱期に、江南地方で決起して、占領された領土を奪い返したのが、朱元璋(しゅげんしょう)。
彼はド底辺から皇帝に成り上がり、そうして、次は明の時代となります。
ところが、その漢族の国である大明国を、今度は満族が攻め滅ぼしました。
次は清国、満族の国となりますが、その清国も潰えます。
現代では満族は少数民族で、漢族がなんだか蔓延っています。
これを指して歴史家は、「漢満(干満)の差が激しい」と評し、、評さないです。
乾隆皇帝 |
乾隆皇帝(けんりゅうこうてい)は清朝の6代目。
最近なんだか、宮城の連中がぷくぷく太ってきました。
乾隆皇帝は満族です。
その出自は、北方の勇猛な騎馬民族。
本当は正しく、満州族、といいたいのです。
でも「満州」と聞くと何故かアレルギー発作を起こす方が居られます。
なのでそういう方々に配慮して、通常は「満族」と表記いたします。
「皇帝、お茶でございます」
太監がお茶を持ってきました。
お茶を置こうとすると、テーブルにお腹が、ぽよん。
「あーもう、太監だからって太ってどうする」
言いながら、乾隆皇帝は自分のお腹の上に茶盆を乗せて、旨そうに茶をすする。
爽やかな緑茶の香り、椅子に座っているのに茶盆がバランスよくお腹に乗っています。
「皇帝こそ何ですか、イザという時にはですね
一番に犠牲になるのはアナタの仕事なんですから、
少しは、節制、してください」
どすどすどすどす。
「皇帝、大変です、兆恵将軍が、兆恵将軍が、
馬から降りようとして足首を痛めました」
「馬から降りようとしてって、何だよ
馬から落ちたんじゃなくてかよ」
どすん、ずるー、どすん、ずるー。
「いや、面目ない、面目ない
皇帝、定辺方面は異常なしです」
(定辺:ティンピエンは地名で、陜西省のあたり)
「定辺方面異常なしって、兆恵将軍は異常ありじゃないよ
あーもう、どいつもこいつも駄目じゃないか
こんなみんな肥っちゃったら、これじゃあ宮城の窮状だよ」
瞬間、静寂の神が舞い降りた。
うわーっ、おもしろーい、流石は皇帝陛下。
太監さんも、兆恵将軍も、みんな一緒に、せーの、
万歳(ワンツイ)、万歳(ワンツイ)、万万歳(ワンワンツイ)!
「いや、ツッコむとこ、そこじゃないから」
そう言って、乾隆皇帝は自分のお腹を勢いよく叩きます。
ぽよん、ぽよん。
「まー、しょうがありませんなー」
「騎馬民族の末裔が、なんで太っててしょうがないんだよ」
「だからさー
北方の寒いとこで走り回ってたらさー
やっぱりねー、なー太監さんよー」
「ですよねー、今は宮城で、朝な夕なに
万歳、万歳、万万歳って言ってるだけですもんねー」
「じゃあ、どうしろって言うんだよ
毎朝、宮城の周りをみんなでマラソンすんのかよ」
「あははは、そりゃー、真っ平だ」
どいつもこいつも頼りにならない。
中華の歴史上、おそらくは一番の版図を誇る清朝のトップ。
皇帝なんて、孤独なものです。
しかし、乾隆皇帝には奥の手がありました。
乾隆皇帝は、厨房へと向かいます。
そこには、幻の秘伝の継承者、命がけで点心を作ると評判の点心師が居たのです。
その名も人呼んで、11代目点心鬼。
彼こそは、あの楊貴妃に命がけで餃子を作ったという伝説を持つ点心鬼の末裔です。
「ふーん、なるほど
それは、兆恵将軍の仰る通りですね
カロリーの摂取量に対して、消費量が小さいのです」
「ふんふん」
「余分なカロリー源を突き止める必要がありますが、
それは、おそらく、酸湯子(サンタンツ)だと思います
酸湯子の製法も色々ありますが・・・」
色々ありますが、その頃の酸湯子(サンタンツ)は、トウモロコシを醗酵した飲み物でカロリーが高い。
満族の出自は、東北に住む狩猟民族ですから肉料理を好む。
脂っこい肉料理を食べながら、酸っぱい酸湯子を飲むのが大好きでした。
寒冷な北方で狩猟をしながらなら、そんな高カロリーの食事でも丁度いい塩梅だったのです。
でも今はもう、朝な夕なにアレですから、肥るかもしれません。
いや、きっと肥るでしょう、肥るに決まってます。
「いいでしょう、私がなんとかしてみましょう」
流石は点心鬼さん、いとも簡単に請け負いました。
この時、乾隆皇帝の厨師が目を付けたのが、烏梅(うばい)でした。
烏梅(うばい)は野生種の梅の、半熟の実を燻製にした、脂肪分解作用のある漢方薬です。
この烏梅をベースに桂花や山楂(さんざ)を配合して、酸湯子に代わる飲み物が苦心惨憺の末開発されました。
それが、現代に伝わる酸梅湯(サンメイタン)。
それ以来、宮城の連中の肥満も止まったということです。
おかげで乾隆皇帝も、もとどおりスマートで健康なお体になりました。
「だから乾隆皇帝の肖像画はどれも痩せてるのだ」
という話しもありますが、それはちょっとアレでしょう。
でも酸梅湯で、本当に痩せるなんて思わないでください。
やっぱり酸っぱいですから、糖分が大量に入っていて、痩せるわけがありません。
その辺は、他の清涼飲料水と同じです。
あ、そうか。
ノンカロリーで作ったら、痩せるって効能書きでいけるかもですね。
誰かこのアイデア、買ってください。
ほら、梅のジュースって、まあ人気無いじゃないですか。
烏梅のジュースってことなら、熱中症対策にも好いと思います。
この酸梅湯、冗談ぬきで、代々皇帝御用達の飲物でした。
大げさな話でなく、庶民に広まったのは清朝末期のラストエンペラーの頃からとなります。
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