2018-03-21

白娘子フォークロア(2)西王母の蟠桃会

 千年の修業が成就、希望膨らむ白ヘビ娘  

 白娘子フォークロア(2)西王母の蟠桃会  

 (白娘子)



朝靄(あさもや)に沈む杭州西湖。

断橋の下、湧き出す白煙、湖面に白い蓮の花が一輪。

白い少女、蓮の花は白い衣装を纏った少女でした。


なぜか突然に修行が成り、白い少女に変化(へんげ)した白ヘビ。

白娘子(はくじょうし)、思わず顔を綻ばせ白ヘビはそう自分で命名しました。

なかなか直球な名付けです。


3月3日は西王母の誕生日。

祝賀の蟠桃会(ばんとうかい)に、神仙どもが大勢で押しかけます。

あのばかでかい凌霄殿(のうぜんでん)がもう満席。

白娘子は初めてなので右も左もよく分からない、隅っこでちょこんとトグロを巻きます。

(注:凌霄殿は「りょうしょうでん」も可。凌霄は花の名で、雲に迫るの意)


乾杯のあとは蟠桃の登場です。

蟠桃は西王母の桃園で採れる仙桃ですが、足りない時や人間は、代わりに『モモあんまん』を食べます。

西王母も降りて来て神仙どもにご挨拶、それにしても隅っこにいる少女、どうにも見覚えがない。

そこで西王母は、南極仙翁に尋ねました。


「ちょいと、じーさんや、じーさん

 あそこの美少女はいったい誰なんだい?」


蟠桃会

南極仙翁はにこにこと笑いながら、となりの呂洞賓(りょどうひん)に振りました。


「こら、純陽(呂洞賓の道号)、お前がご説明申し上げんか」


仙桃をほお張って、キョトンとする呂洞賓。

しきりに考えるのですが思い出せない。

ニヤニヤしながら見つめる南極仙翁。

ふと思い至ってビックリする呂洞賓、大笑いする南極仙翁。


「いや、実はコイツがさ・・・」


南極仙翁が、呂洞賓の湯団子の一件を語ります。


呂洞賓の小さな湯団子、それは実は仙丹なのでした。

自身で500年の修練を積み、呂洞賓の仙丹で500年分の修巧が添加され、

白ヘビは1000年の修行が成り、白い少女に変化したのでした。


西王母や呂洞賓たちも神仙も大笑い、聞きながら白娘子には希望が膨らんできます。


ずっと憧れ続けた人間たちの世界、でもどうしようもない。

あったか湯だんご

だって、ヘビだから。


それが、今なら叶います。

すぐにでも、走って行きたい。

そして白娘子には、あの呂洞賓に振り回されていたガキんちょが妙に気に懸かるのでした。


散会を待って、白娘子は南天門に先回り。

今まさに飛び去ろうとした南極仙翁の雲の尻尾を、ふん掴(づか)まえて引っ張った。

雲から落っこちて転げる南極仙翁。


「ねぇー、ねぇー、ねぇー

 おじーさんってば、ねぇー

 呂のオッサンに振り回されてたさぁー

 あのガキんちょ、あの子、大丈夫なの?

 ねぇーってば、教えてよねぇー

 気になるわよ、知ってんでしょ、ねぇー」


いてててて、ニェーニェーと白ヘビがネコじゃあるまいし。

南極仙翁はボケをかましながら起き上がり、


「あーもう、あの子が何だって?」


見つめる南極仙翁、なぜか上気する白娘子。

色白だからほんのり薄桃色。


「ガキんちょじゃないさ

 お前さんが天界に居るうちに

 下界じゃ18年経っておる」


えっ、と桜色になる白娘子。


「素敵な若者になっとるよおー」


白娘子の顔がバラのように輝きました。

いま心裡(こころうち)を衝いたもの、これはいったい何かしら?


「じゃーさ、どうやって探したらいいのよ?」


南極仙翁、眩しそうに白娘子を見つめながら、


「いますぐ西湖に行ってみよ

 いちばん高くて小さき者

 それが、その子じゃ」


「ありがとう、おじーさん、ちょっと貸してね」


と言って、白娘子、南極仙翁の雲に乗って飛んでいってしまいました。


あれれれ、と南極仙翁。

南極翁ほどの仙人でも、恋する娘には敵わない。






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