西太后に召し出された将軍さん・・
西太后・地骨之皮
(枸杞伝説)
前のお話し:【イヌドラゴラ】(枸杞伝説)
西太后さん |
西太后が眼を患った!
激震走る紫禁城
「ザマーみろ」なんて考えてはいけません。
彼女は彼女なりに、中華の未来を慮ればこそ、以下略。
ここしばらく、なにやら胸苦しさを訴えていた西太后。
こんどは眼もよく見えなくなってきた、と言います。
視界が朦朧、曖昧模糊としていると言うのです。
御殿医たちが入れ代わり立ち代わり診察するのですが、一向に回復しない。
困りました。
今はビタミン剤投与でなんとか時間稼ぎをしています。
でも、いつまでも誤魔化しきれない。
もしも、このまま西太后の眼病が癒えなければ、その時は、
─ 処 刑! ─
青ざめ貧血を起してぶっ倒れる御殿医が続出してしまいました。
そんな御殿医たちの様子を見かねた、銭という将軍さんが居りました。
銭将軍は、御殿医たちにいらぬお節介をいたします。
かって、銭将軍の母親が同様の病を得た
郷士のひとりが枸杞の根を掘ってきて、
洗って皮を剥いて、
煎じて呑ませたら、眼が治った
そんなことを語ってしまったのです。
いけません!
将軍なら軍務に精進すべきです
軍人たる者が魑魅魍魎の世界に係ったりなどしたら・・
御殿医たちは銭将軍の治療法を推挙、西太后に召しだされた銭将軍。
西太后の御下命。
銭将軍は、わざわざ郷里まで出向いて枸杞(くこ)の根を掘って来るハメになりました。
ほら、言わんこっちゃない
御殿医たちに責任なすりつけられちゃった
泥まみれになりながら枸杞の根っこを掘り出して持ち帰った銭将軍。
医局で自ら枸杞の根の皮を剥いて、煎じて、西太后に献上いたします。
数日後、幸いにも視力が回復して気力も充実してきた西太后。
銭将軍を召しだして、お尋ねになられました。
「何という薬草を使ったのですか?」
「はい太后さま、これは、枸杞(コウチー)・・・」
「えっ、狗乞(コウチー)?」
・・・・・ ま、 拙い! ・・・・・
薬にイヌ(狗)を配合しているとでも誤解された日には、
その時は、
─ 処 刑! ─
「はい太后さま、これは、・・・」
「これは?」
枸杞の根、根っこ、地面を這い回っているもので、
地面を這い回っていて吉祥のものは?
何か名称を思いつかねば・・・、
気持ち悪い脂汗をヌラヌラ垂らしながら、銭将軍。
「じ、地骨皮(じこっぴ)と申します」
と平身低頭。
『地骨』とは、地面に骨でも埋まってそうで不気味なんですが、これは古人が考えた『地盤の骨格』という意味です。
唐代あたりの漢詩に散見される語で、古い風水の資料にも見られるようですから、きっと龍脈の親類か遠縁あたりでしょう。
端的には単に、『石』の事らしいです。
聞いた、西太后、
「おお、地骨皮(じこっぴ)ですか、
これは大変に素晴らしいですね
わたしは地骨の皮を食した訳ですか
きっと天地の如き長寿を得ることでしょう」
ギリギリ、セーフ
西太后に御言葉を頂いた銭将軍ですが、さすがは軍人さんです。
平身低頭したまま微動だにしない。
と思ったら、やっぱり失神していました。
枸杞の根皮を『地骨皮』と称しますが、変な名前だなんて思ってはいけません。
その陰には、こんなに苦労した将軍さんが居たのです。
地骨皮は指定医薬品なので、ちゃんと病院で処方を頂いてから、服用なされてください。
日本のどこに、んなもの処方してくれる医者がいるのか知りませんけど。
【次のお話し】東西邂逅枸杞珈琲(枸杞伝説)
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