2017-09-20

玉兎児(中秋伝説)

 人々を救ってあげてもらえませんか?、「ぴょん」 

 玉兎児 

 (中秋伝説) 



兎児爺

ある年のこと、北京で疫病が発生してしまいました。

たちまち蔓延して、どの家でも病人を抱えていて、一旦発病したら、これがなかなか治りません。


そんな様子を月宮から見て、嫦娥は心を痛めます。

かたわらの玉兎をそっと抱き上げ、語りかけました。


「人々が大変な難儀をしています

 なんとか救ってあげて貰えませんか」


鼻先をヒクヒクさせながら、玉兎は嫦娥を見つめます。


 ぴょん


下界に飛び降りた玉兎は、可愛い少女に変化しました。

病人のいる家に跳び込んで、たちまち病気を治してしまいます。


「どうも有難う御座いました」


家人が礼を述べるのを、鼻先をヒクヒクさせながら聞く少女。

黒目がちの大きな瞳。


 ぴょん


また別の家に跳び込んでは、次々と病人を治していきました。

人々は感謝を込めて贈り物をしようとしましたが、玉兎は受け取りません。

代りに他人の衣装を借り受けて、着替えてから次の病人を訪れるようになりました。


正体を悟られぬように、また、怪しまれぬようにと、変装しようというわけです。


 ある時は、油売り

 ある時は、辻占い

 またある時は、男装の麗人に、


粋な姐御や、関西のおばちゃんにだって扮装します。

遠くへ出向く時は、動物に乗る。

トラ、獅子、ウマ、鹿、これまたいろんな動物に乗って出かけて行きます。


そうやって、京城の内外の病人を、ことごとく力技で治してしまいました。

疫病を終息させた玉兎は、月宮へと帰っていきました。

玉兎は正体を悟られぬようにと、変装をしたのですが、


 可愛い口許

 黒目がちの瞳

 そして、長い耳


それは隠しようがなかった。

人々はみな、月宮の玉兎が助けに来てくれたのを、知っていたのでした。





いろんな姿に扮装した、なぜか動物に乗っている玉兎。

人々は『兎児爺(トゥアールイエ)という粘土の塑像を作りました。

カラフルに彩色された粘土細工の、北京の可愛い民芸品。

それは祭月用品ではあるのですが、もちろん子供のオモチャです。


子供はちゃんと神サマにお参りしてから、やっと買って貰える。

遊ぶときには「どうか一緒に遊んでくださいな」、とお願いしてから遊ぶ。

そういう決まりです。


たぶん、粘土細工のウサギですからね。

耳なんてすぐに壊れちゃうに決まってる。

親に一頻り叱られて、兎児爺による教育が完了する。

そんな構図なんでしょうね。




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