2017-04-22

元宵姑娘物語り

元宵姑娘物語り
(もちだんご)



元宵節の月@飾磨区中島の中島中公園(その2)


元宵節─“宵”のあたりがロマンチック。

正月15日の松の明け、日本の小正月が元宵節です。

もちろん旧暦だから、十五夜は満月。
人々は、燈篭を燈し、月を愛でます。

そしてダンゴを食べ、一家の団円を祈念し、離別した家人に思いを馳せます。




ある冬の日でした。
しばらく雪が降り続いたので東方朔(とうほうさく)は漢武帝(前漢7代目皇帝)に梅の花を届けようと思い立ちました。

御花園に入ると、まさに一人の女官が泣きながら井戸に身を投じようとしています。
あわててこれを押しとどめ、東方朔が話しを聞くと、

「故郷の家には、まだ父母が居ります
妹もいます
でも・・・
宮中に上がって以来、逢うことも叶いません
毎年この季節になると逢いたくて・・・
でも、このまま、
親孝行もできないまま逢えないならもう、
もう、死んでしまいたい」


女官の名は元宵(げんしょう)といいました。
元宵の話しを聴きながら、東方朔は何やら思いついたようです。

「ありゃりゃ、そーなの?
じゃあ、まあ、私が逢わせたげるよ
家族のみんなに遭わせたげるから
ここは私に、まっかせなさい」


長安の街は、パニックに陥ってしまいました。
正月に卜占(ぼくせん)をしてもらった人たちの卦が、どれもこれもみんな同じだったのです。

火難の相だ
 1月16日、
 おまえはもう死んでいる

人々は解決策を探して戦々恐々、そこへやって来た東方朔。

「あー、正月だからねぇ
火神君が見回りにくる時期だもんね
とうとう、長安の街も焼き捨てかぁ
13日には、赤衣神女が下見に来るしね
偈語(げご)にあるよ、長安が焼けちゃうって
コレあげるからさあ、天子様に相談してみてよ」

と人々に手渡された赤い紙。
でも偈語なんて誰も読めません。
(注:偈語は仏教の予言。って東方朔、あんた道教系じゃなかったのか、おい)

その夜のこと。
牛に座って笛を吹きながら、長安の街を流す妖しい女性の姿を目撃した者がありました。

赤衣神女がもう顕(あら)われた!
長安の街が、紅蓮の炎に焼け落ちてしまう。

そんな噂がたちまち広がり、逃げ出すものまで出始める。
例の偈語は、すぐさま宮城の漢武帝に届けられました。

もちろん、卜占も偈語も、東方朔の陰謀です。
赤衣神女の正体は、東方朔の手引きで赤い衣を纏った元宵でした。

漢武帝は、「もー、まだ松の内になんだよー」とか言いながら、一見してビックリ。

|長安在却
|火焚帝闕
|十五天火
|焔紅宵夜
>長安に厄災在り
>火神軍団の襲来
>15の日の火焔
>宵闇を焼く天火

漢武帝はすぐに東方朔を呼び、相談しました。

東方朔は考え込むふりをしながら、おもむろに、

「火神君ですかあ
そーいえば、ダンゴが大好きだそうですよ
 アナタもいつも食べてるでしょ
 なんとかいう女官が作ったの
えーと、あれは、あー、元宵、元宵」

元宵にダンゴを作らせて、香を焚き、火神君に供えて御機嫌をとれといいます。
さらに、灯篭や提灯をいっぱい燈して満艦飾にして、花火をたいて宮城が燃えている風にしたら、

「火神君も、納得するんじゃないですかー」

そして続けた。

「皇帝、城下や近在の家々にも通達してやらせましょう
ここは、臣民一体となって事にあたりませんと
城門はぜんぶ開放して、みんな呼び寄せるのです
肝心なのは、リスクネージメント
あ、それから、提灯には“元宵”と書いとくのがイイですよ
あの女官が作ったダンゴおいしいから、アピールしときましょう」

吹いたものです。
でも、漢武帝は真にうけて、

「OK、それでいこう!」

きました正月15日。
あのパニックは、どこへやら。
街は彩りにあふれ、長安城下は熱狂的なお祭りさわぎ。

元宵の両親も妹を伴ってやってきました。
みると、宮城の大灯篭の文字がなんだか「元宵」のような・・・

「あ、ああ、あれは・・・」

元宵!

「元宵や~」

「元宵ねえさ~ん」

大声で叫びます。
しきりに名を呼ぶ声に、元宵姑娘が見渡すと、そこには。
そうしてついに、元宵は家族との再会をはたしました。


一夜あけての長安。
幸いにも街は平穏無事でした。
って全部、東方朔の謀りごとなんですから当たり前ですが。

でも、漢武帝は大喜び。
この正月明けのお祭り騒ぎが、何やら気に入ってしまったようです。

「なんかイイね~、これ
よーし、毎年やる事にしようか」

すっとぼけて東方朔が焚きつける。

「はいはい、これも皇帝のご威徳ですよ」

「正月の15日には灯りをいっぱい燈して、ダンゴを作るのだ」

「やっぱり、元宵姑娘の団子が一番おいしかったですね」

「うん、元宵のダンゴはイイねー
よし、このダンゴは、“元宵”と名づけよう」

こうして元宵節には、団子を作り月を愛で、離別して今は逢えぬ家人に想いを馳せる風習がはじまりました。



「元宵姑娘」という昔話です。
お話しの時代設定は漢代ですが、元宵節の起源は宋代の頃と考えられています。
中国全土に見られる風習で、地方によりさまざまな元宵がありますが、概ね南方は湯圓(タンエン)、北方ではダンゴを食べます。
このお話しの原文では、湯圓(湯だんご)になっていました。

YouTube「元宵節的伝説」




[コマーシャル]

春はあけぼの、夕に湯だんご

揚げたての熱いもちだんごも美味しいのですが、
少し肌寒い春の夕暮れには、やっぱり温かい湯だんご。
あったか湯だんご、滑らかなのど越しがとっても格別。

クコの実入りをご希望の向きは、店長にお申し付けください。



[メモ]

東方朔は漢武帝の寵臣で、伝説の世界では東方朔はユーモアの有る大臣というキャラで描かれます。
また東方朔には西王母の仙桃を盗んで食べたという疑惑があり、その正体は仙人であるという噂が絶えません。
その疑惑の故に東方朔は孫悟空に盗人呼ばわりされましたが、その孫悟空自身が西王母の仙桃を盗み食いしてるわけで。
他のお話しでも、東方朔には登場してもらう予定です。

漢武帝と東方朔@テレビドラマ


長安は現代の西安市で、最盛期には世界屈指の国際都市でした。
ほら、芥川龍之介の杜子春は舞台が確か洛陽でしたが、原作はさらに伝奇色の強いお話しで舞台は長安です。
杜子春に財宝を与えた奇妙な老人のモデルは、往時長安に出入りしていたペルシャあたりの外国商人であったろうと考えられていますが、そんなお金持ちを輩出するほどに長安の経済は栄えていました。
長安から黄河沿いに300kmほど東が洛陽、さらに100km東が北宋の首都の開封。
京都と同様に、皇帝が引っ越したきり全然帰って来ない中華の元首都。
西安市の人々には、「こっちが本物の首都なんだよ」と思っている節があるようです。



火神君は火の神様で、仕事始めは正月明けに火事を起こすこと。
なんとも困った神様もあったものです。
元宵姑娘と同じ手口で火神君の難を逃れたという事例が、別の伝説でも伝わっています。
正月十五日の火祭り、そしてお餅と来ると。
何か、日本のとんど焼きに通じるものがあるなと思うのです。
もっとも「とんど焼きが日本の元宵節だ」と言っても、店長は信じてくれません。

火神君の下の丸いのは饅頭(マントウ)。火神君ったら点心大好きなのね
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