人々を救ってあげてもらえませんか?、「ぴょん」
玉兎児
(中秋伝説)
前のお話し:【玉兎搗薬】(中秋伝説)
兎児爺 |
ある年のこと、北京で疫病が発生してしまいました。
たちまち蔓延して、どの家でも病人を抱えていて、一旦発病したら、これがなかなか治りません。
そんな様子を月宮から見て、嫦娥は心を痛めます。
かたわらの玉兎をそっと抱き上げ、語りかけました。
「人々が大変な難儀をしています
なんとか救ってあげて貰えませんか」
鼻先をヒクヒクさせながら、玉兎は嫦娥を見つめます。
ぴょん
下界に飛び降りた玉兎は、可愛い少女に変化しました。
病人のいる家に跳び込んで、たちまち病気を治してしまいます。
「どうも有難う御座いました」
家人が礼を述べるのを、鼻先をヒクヒクさせながら聞く少女。
黒目がちの大きな瞳。
ぴょん
また別の家に跳び込んでは、次々と病人を治していきました。
人々は感謝を込めて贈り物をしようとしましたが、玉兎は受け取りません。
代りに他人の衣装を借り受けて、着替えてから次の病人を訪れるようになりました。
正体を悟られぬように、また、怪しまれぬようにと、変装しようというわけです。
ある時は、油売り
ある時は、辻占い
またある時は、男装の麗人に、
粋な姐御や、関西のおばちゃんにだって扮装します。
遠くへ出向く時は、動物に乗る。
トラ、獅子、ウマ、鹿、これまたいろんな動物に乗って出かけて行きます。
そうやって、京城の内外の病人を、ことごとく力技で治してしまいました。
疫病を終息させた玉兎は、月宮へと帰っていきました。
玉兎は正体を悟られぬようにと、変装をしたのですが、
可愛い口許
黒目がちの瞳
そして、長い耳
それは隠しようがなかった。
人々はみな、月宮の玉兎が助けに来てくれたのを、知っていたのでした。
次のお話し:【貴妃の月】(中秋伝説)
いろんな姿に扮装した、なぜか動物に乗っている玉兎。
人々は『兎児爺(トゥアールイエ)』という粘土の塑像を作りました。
カラフルに彩色された粘土細工の、北京の可愛い民芸品。
それは祭月用品ではあるのですが、もちろん子供のオモチャです。
子供はちゃんと神サマにお参りしてから、やっと買って貰える。
遊ぶときには「どうか一緒に遊んでくださいな」、とお願いしてから遊ぶ。
そういう決まりです。
たぶん、粘土細工のウサギですからね。
耳なんてすぐに壊れちゃうに決まってる。
親に一頻り叱られて、兎児爺による教育が完了する。
そんな構図なんでしょうね。
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