嫦娥は、恋の女神の代用品
【メモ】中秋節と嫦娥と恒娥
(中秋伝説)
(お話し)【奔月(2)嫦娥奔月】(中秋伝説)
拝月の儀式 |
中秋節には『丸いもの』。
スイカ、梨、リンゴ、ブドウ等々の丸い果物を供えて月を拝し、一家団円を祈念して丸い月餅を食べます。
丸くない果物って、バナナぐらいしか思いつきませんけど。
月餅は近しい人に贈るもの、他人から贈られて食べるもの、バブリーなメンツの国だから、近年は極端な過剰包装が社会問題化しています。
店長も「月餅、自分で、作る~」とか言って、月餅の型を上海から取り寄せてたんですが、
結局、自分では作らずに、上海から送ってきたのを食べています。
店長の場合はいつも、中秋節になると、里芋とエダマメを蒸(ふ)かして、梨をむいています。
それが上海の風習だと言うんですが、本当に上海の風習なのか、安徽省なのか、店長の一族だけなのかは、あやしい処です。
しかしまあ、能天気に太陽の代表と月の代表のカップルってわけじゃなく、
太陽を射落とす英雄と月中仙女のカップルですか。
なんか陰の側の暗黒夫婦、何か昏い面のあるお話しです。
嫦娥の読みは北京語で「チャン・ウー」、和文では「こう・が」ですが、
現在はもう通用してしまっているので「じょうが」でも好いのでしょう。
この前、久しぶりに図書館で夢枕獏の『陰陽師』を借りてきたら、嫦娥のお話しがあって「じょうが」になっていました。
「こうが」と「じょうが」じゃ「じょうが」の方が音感が好いから、夢枕獏は故意に「じょうが」にしたんじゃないかと。
ああこれで、日本では「じょうが」で決まってしまったのだよ。
嫦娥は、もともとの古い資料では『恒娥(こうが)』という名でした。
恒娥の頃は悪妻で、后羿の留守を狙って勝手に一人で仙丹を「不死の薬」と信じて呑んでしまいます。
すると思いがけず成仙して、後悔しながら独り寂しく月で暮らすことになってしまう。
酷い類型では、恒娥は月でガマガエルになってしまいます。
なので古くは、月にはウサギとカエルが棲んでいました。
もともとはそんなストーリーで、日本で伝えられるお話しもそうですが、現代では晴れて「悲劇の美女」となりました。
『恒娥(こうが)』が『嫦娥(こうが)』になったのは、後世、皇帝の名と被ってしまったのを憚ったからだそうです。
まあ昔の若い頃はやんちゃでしたから、それは憚りもしたのでしょう。
『 嫦(チャン) 』の字はこの時に、嫦娥のためだけに造字された、というお話しもありました。
なのでやはり読みは「こうが」、が正しいという事にはなるのでしょう。
『 娥(ウー) 』は「女性の優しさ美しさ」を意味する漢字です。
『嫦娥(こうが)』で意味は、「永遠に美しい女性」ということになるでしょうか。
つい先日、改めて「嫦娥」を検索していて知ったのですが、
たつの市の御津(みつ)の室津(むろつ)に、『嫦娥山』って山があるんですね、近くですよ。
「嫦娥山に登った」とかいうブログが有って、吃驚しちゃいました。
いったいどういう謂れで、『嫦娥山』になったんだろ?
弁慶が彼女とふたりで月見をしたから、とかだったら面白いのに。
ああ、弁慶が夜な夜な書写山(しょしゃざん)を抜け出して室津の遊女のもとに通ったのは、姫路じゃ有名なお話しです。
室津(むろつ)は、博多津や神戸の福原に匹敵するクラスの、古い湊(みなと)なんですよ。
中秋節は、端午のチマキと同じく、モンゴルからマレーシアに至るまでの幅広い地域の風習です。
なので、言い伝えも地方によりさまざま。
曰く、モンゴルでは月を追って朝まで馬で駆ける
曰く、女性が先に月を拝して男は後から、或いは男は拝さない
曰く、夜中にこっそり焼香すると恋人ができる
曰く、夜中にこっそり月光を浴びると懐妊する
子のない夫婦に、子を贈る方法というのが有りました。
(1) 贈る側のヒトは既に子持ちでなければならない
(2) 盗んだ冬瓜にコドモの絵を描いて、穴をあけて水をみたす
(3) 当人が月見をしているうちに、こっそり布団に仕込む
(4) 当人が寝ている間に、布団が水浸しになる
(5) 翌朝、冬瓜を盗まれた家の者は大騒ぎをする(騒ぐほど子供は元気)
(6) 翌年、首尾よく赤ん坊が生まれる。
(7) 冬瓜を贈った者は、生まれた子供の義父・義母となる
もう、どんな由来でできた風習なんだか。
まあ夜中にフトンが水浸しになったら、カアちゃんかダンナのフトンで寝るでしょうから、なんか効果はあるかもしれません。
中華には「恋の女神さま」って無いんですよね。
月下老人はもろに「オヤジ神」だし、広東に『泗州大聖』って恋を成就させる機能の神が居ますがやっぱ「オヤジ神」。
『和合二仙』は、戦場に行った息子を探すご夫婦だし。
考えたら、日本も「高砂や~」ときたら翁と媼、きっと昔は「子の結婚相手は親が勝手に決めていた」からでしょうね。
「恋人たちの女神さま」を代行しているのは、筆頭はやっぱ、七夕の織姫さまかな?
でも、織姫さまの職業は機織女(はたおりめ)、芸事の願いは叶えてくれても、他人の恋の手配をしているどこじゃなかろうし。
織姫さまの廟にお参りして恋を叶えるなんて聞いたことないし。
観音菩薩は、修行しすぎて無性になった元男性だし。
女媧(じょか)は恋神ってより「黄色人種の母」。
白娘子(はくじょうし)は、ちょっと恋神さまの感じあるけど、ヘビ仙女だから神とまではいかない。
近世では、香妃伝説の香妃がカシュガルで恋を叶えてくれますが。
今のところ「恋の女神さま」を代行しているのは、『嫦娥(チャンウー)』という事になるかと。
嫦娥と猪八戒の2ショット |
ただ・・神代の昔の・・母系社会の時代ですからね。
后羿は后羿で浮名を流してるし、嫦娥は嫦娥で西遊記の猪八戒となんか噂があるし、呉剛大仙という仙人となんかあったような噂もあるし。
奔放なもんです。
結局、今も昔も猫の世界も、「相手を決めるのは女性側」だなと思います。
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