2017-07-02

神農記(2)降生

 神農嘗百草、炎帝神農は世に降った 

 神農記(2)降生(ごうせい) 

 (神農伝説) 

【前のお話し】神農記(1)神農嘗百草  

【次のお話し】神農記(3)五穀と薬草 


神農氏と動物が関わる話しが、なんか多い

寄り集いさえずる小鳥の群れ、徘徊する山の獣たち。

猛禽類も肉食獣もやって来る。

なのに、ここに集まってくる動物たちは争わない。


人々はいつも奇異に思っていました。

人々にしても獣を狩って生活しているのに、ここに集まる動物は獲ってはいけない。

何故かそんな気がするこの場所は、神域ではあるのでしょう。


動物たちが集うようになったのは昨年のこと、神龍が降りて以来です。

ここ常羊山の麓の洞窟のあたりから、神龍が飛び去っていくのを人々は見たのでした。

ほどなく「遊興に来ていた少典国のお妃さまが龍にさらわれた」、そんな風聞が伝わってきたものです。


ある朝、集まった鳥たちが整然と編隊を組み、鷹に率いられて北へと飛び去っていきました。

獣たちも鹿に率いられて、隊列を組んで整然と北へと走り去っていきました。

鳴き声もあげず、厳粛な面持ちで走り去る獣たち。

いったい何が始まるというのか、怪訝に思った人々が集まってきます。


お昼前になると、動物たちが帰ってきました。

歌い舞い踊る小鳥たち、嬉しそうに飛び跳ねる獣たち。

その中にひとりの女性。

五色の祥雲を戴き、金色の光を放ちながら、

憔悴した面立ちで、しきりに人々に手招きをしています。

それは神龍に攫われたはずの少典国のお妃さま、安登夫人でした。


 万歳、万歳、万万歳 


何処からか響き渡る歓声、山の空気が吉祥の気に満ちてくる。

龍にさらわれたお后さまが、再びこの地に戻ってきた。

この天地に満ちる吉祥の気は、まさか?


まさしく正午、神効がいちばん強くなった刻限に、洞窟から響き渡る嬰児の産声。

洞窟の中で母親に抱かれたその子は、うなじに玉串の首飾りと、胸には輝く金牌を戴いていました。


幅広の体に、大きな唇。

肩に乗った牛頭、頭には小さな2本の角(つの)がある。

天子の相をもった、龍の子の誕生。


沸き返る洞窟、先を争って霊芝を献上する鳥たち、獣たちもそれぞれに木の実や果物を牙に銜えて駆け込んできます。

龍の子と母親に拝謁して、人々は狂喜乱舞し祝賀の宴が突如として始まりました。

龍の子を囲み、母親と人々が乾杯をしているとその時、地響きとともに9個の泉が湧き出てきました。

山までもが龍の子を祝福する、泉は互いに通じていて、龍の子と人々とが通じ合うことを示す。

宴は夜更けまで続くのでした。


三皇廟(台湾)右が鹿で左が鷹

やはり尋常ではありません。

母と子は、2日目には洞窟の外に出て来ました。

龍の子は3日目には言葉を発し、5日目にはもう歩き始め、7日目になると歯が生えてきました。


何事も深く考える性格。

母親や大人たちが糧食の採取にでると傍でそれ観察し、真似をはじめる。

そんな時にはいつも鷹が飛来して、その翼を広げて風雨から龍の子を守りました。

龍の子が腹を空かせると、鹿がやってきて乳を飲ませ世話を焼きます。


そんな龍の子、後の炎帝神農の没した後も、三皇廟の神農像の傍では鷹と鹿が寄り添っています。



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【お話し一覧】点心のひみつインデックス 


【メモ】


常羊山下帝降生』というお話しです。

神としての炎帝神農はセットですが、実のところ炎帝と神農の関係はよく分かりません。

ホントに居たとしても、同一人物だったのか別人だったのか、結着はついていません。

このお話しは、炎帝の誕生譚として伝わるものです。


神農は長じて一族の首領となり、薬草採取の旅に出ます。

神農が薬草採取をしたとする地はあちこちに有りますが、その2大聖地は『神農山』と『神農架』でしょうか。

どっちが本物?

大雑把な中華の民はそんなコトは気にしない、神農山で始めて神農架で死んだ、ことになっています。


死に様としてよくあるのが、毒草を誤飲して解毒しきれずに中毒死とか、鶴に乗って昇天とか。

どういうことかわかりませんが、神農のお墓の炎帝陵は3箇所もあります。

神農が生まれた神農洞にしても、元祖と本家の2ヶ所があります。

伝説中の神農は、死後も神仙となって神農架の『木城』に棲み、薬草採取をしながら人々を助けてくれます。


神代の昔のお話し、といえば聞こえは好いですが、ほとんど原始時代のことです。

石器時代に毛の生えたような頃ですから、イエスだか聖徳太子だかが馬小屋で生まれたのとは違い、

神農が洞窟で生まれたのは変でもなんでもないと思います。

おそらく、ツノは生えてなかったろうと思うのですが。





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