2017-06-17

【メモ】骨を売る肉屋(排骨酢豚)

 酢豚にパイナップルは入れる派?入れない派?酢豚の系譜  

 【メモ】骨を売る肉屋  

 (排骨酢豚)  



無錫排骨

酢豚といえば広東料理、野菜が入ってパイナップルが絶妙です。

パイナップルに賛否両論はあるものの、本来の酢豚にはパイナップルどころか野菜も入らない。

それどころか、野菜入り甘酢餡かけの酢豚は、本当に中華料理の範疇なのか、ちと怪しい。

逆に、他の野菜は入らず、パイナップルだけ入る酢豚もあります。



酢豚の定義は、そんなものが有るなら、「下味を付けた豚肉の甘酢餡かけ」です。


無錫排骨(ウーシーパイクー)は、醤油と砂糖と香料でスペアリブを煮込んだもので、お酢は使いません。

(少し乱暴な見方になりますが、)

鎮江(ツェンチャン)の黒酢を使った無錫排骨が、糖醋排骨(タンツーパイクー)で、これは江南菜(チャンナンツァイ)です。

黒酢で野菜の苦味が増しますから、野菜は入れません。


普通の酢豚

流石に最近は知られるようになってきたお話しですが、念のため一応、

まずは馴染み深い広東式の酢豚です。


広東料理の野菜入り白酢の酢豚は、もともと外国人用に開発された料理でした。

日本の中華料理は日本風にアレンジしたもので、本来の中華料理ではない」、とはよく膾炙(かいしゃ)されます。

これは日本に限ったことではなく、世界中どこでも同じです。


広州、広東、広西(クワンシー)、あの台湾と真向かいあたりの地図を思い浮かべてください。

もともとは蛮族とか夷族とか呼ばれた、少数民族の地域です。

長江流域の楚国や蘇州・上海・杭州あたりも、昔は黄河流域の中原から見ればそうでした。


現代の発展振りを差し置いて、酢豚が発祥した当時の昔でいえば、中原の外、中華の隅っこ、有り体に申し上げてど田舎です。

そこで、広東の人々はどうしたか?


ある者は、学問を修めて科挙を目指し進士となりました。

1人そういう者が出ると、後が続き易い。

広州のこのあたりには、“状元村”と呼ばれるようなやたらと進士を輩出した、ど田舎なのに裕福な村がポツポツ点在します。


もう家には、うだつが上がりまくり。

“うだつ”は屋根用の防火壁ですが、お金がないと付けられない、「うだつが上がらない」ですね。

倫文叙(ルンウェンシュー)の状元及第粥なんてお話しも広州が舞台で、このお話しは次の受験シーズンにでもと思っています。


また、広東はかつては、シルクロードの海路の中継地点で、アラビア商人が頻りに出入りしていました。

清代には、広東は、西欧との交易船の寄港地でした。


そこで、広東の人々はどうしたか?


外国人船員用に料理をアレンジして、提供した。

酢豚の肉は、あえて骨無しにして、野菜を入れて、ここで野菜を入れるからという理由で白酢を使った。

この「あえて肉を骨無しにした」のが、酢豚がヒットしたポイントと言われています。


加えて、この白酢を使った点が、絶妙だと思います。

ましてやパイナップルを入れるなんて、誰が思いついたんでしょうか。

パイナップルの酵素が、肉の消化を手助けします。


申し上げてもなんですが、「健康的・野菜たっぷり黒酢の酢豚」なんてメニューを見かける事がありますが、先人に失礼だと思います。

黒酢×野菜はタブーだと思うのですが、おそらく本物の黒酢ではないのでしょう。

黒酢と和えてもよいのは、スイートコーンぐらいじゃないですか?


或いは広東の貧乏人は、そのまま外国船に乗って世界の各地に散っていきました。

散った先で、現地にアレンジした広東料理を提供して広めていった。

華僑のはじまりですね。

華僑の人々には、「父祖がど田舎の貧乏人でどうしようも無かったから海外に散っていった」という背景があります。

そしてこれが、世界中で「中華料理=広東料理」となっていった背景でした。



野菜&パイナップル入り甘酢餡かけの、広東式の酢豚は外国人には好評でした。

ですが、当の中国人どもには評判はもうひとつのようです。

野菜を入れると水分が大量に出ますから、これが嫌われたのです。


「酢豚だから、スープに浸かっている状態には出来ない

 然りとて、この水分を捨ててしまうのも勿体ない」


そこで中国人どもはどうしたか?


なんと、野菜は入れずに、パイナップルだけを入れて、酢豚を作り始めました。

これを、菠蘿咕咾肉(ポールオクーラオロウ)といいます。


菠蘿(ポールオ)が、パイナップルですね。

咕咾肉(クーラオロウ)は、実のところ糖醋排骨(タンツーパイクー)とそれほど厳密な区別はありません。

ですが、咕咾肉は、まずまず「骨なし肉で作った酢豚」という認識でよいかと思います。


野菜の有無は必ずしも関係ないし、ましてやパイナップルの有無は全く関係ありません。

パイナップルが入ったら、“菠蘿(ポールオ)”という冠詞が付く、それだけです。


糖醋排骨

酢豚の起源は、大雑把にみてどうも、2系統あるようです。


1つは、江南の、無錫排骨(ウーシーパイクー)の発展形の、糖醋排骨(タンツーパイクー)

もう1つは、ハルピンあたりの東北(トンペイ)の、鍋包肉(クオパオロウ)です。


鍋包肉は、店長曰く、「油を一切使わない」と言います。

調べてみたら、現代はそうでもないようなのですが。


本来は油を使わないという話し」と、「東北(トンペイ)の料理」、これでピンときます。

鍋包肉は、おそらくもとは、北方の騎馬民族─女真族あたりの料理なのでしょう。


面白いことに、ここが中華だなあと思うのですが、最近は鍋包肉にパイナップルを入れはじめています。

これを、菠蘿鍋包肉(ポールオクオラオロウ)、と称しています。


あの人たちもバブルを通過して、健康志向になってきたんでしょうか。

ほら、中国の食材ってなんか安心できませんでしょ?

それは中国人自身も同じで、近頃は清真料理(回族の料理)が流行ったりしています。

回教徒は、戒律が厳しくて、ルールを踏み外さないからです。


下の図は、噂を聞きつけた店長が、見よう見まねで作った鍋包肉です。

手許にパイナップルがなかったので、残念ながらパイナップルは入ってません。


店長のお手製の包鍋肉,パイナップルなし版

東北の鍋包肉と、江南の糖醋排骨が、どんな風に広東式の酢豚になっていったのか、そこまでは分かりません。

実は、酢豚の成立には、蘇東坡(そとうば)が関係しているのでは、と妄想しているのですが。

蘇東坡は、あのトンポーロウ(東坡肉)を作った、やたら豚肉料理大好き人間ですからね。

しかも北から南まで、あちこち転勤しまくっている。

杭州で豚肉料理にかまけていて、酢豚に関係してないはずはなかろう、と思うのです。




コマーシャル


一壽・上海特色点心店の排骨酢豚は、ちゃんと鎮江香醋(ツェンチャンシャンツー)を使った、

本物の、糖醋排骨です


これはもちろん、店長のこだわり、


ではなく、単に、日本人に合わせてアレンジなんて気が無いだけです。

排骨酢豚のご注文を頂いたら、


曰く、「やっぱり骨付きの肉の方が、柔らかくて美味しいよー」とか「糖醋排骨は鎮江香醋よー」とか言いながら、

喜々として酢豚を作りはじめます。


骨付きですから、小さなお子様には気をつけてあげて頂きたいのですが、

初めて親戚の幼児に食べさせた時には、少し心配したのですが、


子供はあれで侮れない。

もぐもぐ食べてるな、と思ったら、器用に骨だけぺっと吐き出して、次の酢豚に手を伸ばす。

なんか、そんな風でした。







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