2017-12-26

科挙考試及第法(及第粥)

 字の書けないお兄さんが、むずかしいむずかしい科挙に合格 

 科挙考試及第法 

 (及第粥) 


紫禁城の保和殿

字が書けない肉売りのお兄さん、帳面を付けるのに不便です。

そこで思いついたのがお得意さまの私塾の先生でした。

この先生は噂では大変に偉いお方らしい、さっそく字を教えてもらうことにしました。

さすがは偉い先生です。

先生は、お兄さんに3つも字を教えてくれました。


 猪肉、猪肝、猪腸粉


それだけ、先生にしたら、帳面付けるならこれで十分だろう、という事なのですが。

ここで、“猪肉(ツゥーロウ)『ブタ肉』のことです。

イノシシは『野猪(イェツゥー)になるのですが、では野ブタは?

うーん、たぶん、『野生猪(イェションツゥー)、かな?


ある年、科挙の試験が開催されました。

科挙は例年定期的にやるのではなく、何年かに1度、誰かが思いついたら皇帝に許可もらって実施するだけですから、

これはチャンスです。


「功名は先祖の積徳によるものだ」がモットーのお兄さんも科挙に挑戦です。

試験用紙に堂々と書いたのが、「猪肉、猪肝、猪腸粉」の7文字でした。


ところが、科挙試験の主管が例の私塾の先生だったのでした。

解答用紙に堂々と書かれた「猪肉、猪肝、猪腸粉」の7文字。

お、これは、あのお兄さんだなと、ピンときた先生。

「よし、あのお兄さんを喜ばしてやれ」、と先生は自分で答案を書き換えた。

お兄さん、科挙試験の郷試合格。


科挙は全国区で募集ですから志願者も多い、なので3次試験まであります。

それぞれ、郷試、会試、殿試の3つ。

郷試に合格しても、会試の受験資格があるだけです。


私塾の先生ったらあとになってから、お兄さんがまた受験に来るのを恐れて、会試の主管に申し送ったのでした。


「もしも、『猪肉、猪肝、猪腸粉』の7文字を見かけたら、

 その答案は宜しく宜しく、握り潰してください」


はたして会試の答案に有ったのでした。


『 猪肉、猪肝、猪腸粉』


これを見て、試験管はみんなで大笑い。

ですが、そこで会試の主管は忖度(そんたく)しちゃった。


あの郷試の主管は『宜しく、宜しく』と言っていた。

これはもしや、暗に『上手く取り計らってくれ』、というコトではなかろうか?

そこで,会試の主管は答案を自分で書き換えた。

お兄さん、科挙試験の会試合格。


会試に合格したら、進士と呼ばれ官僚抜擢、大変な権限を得ます。


いよいよ最終試験の殿試、北京の紫禁城で実施です。

肉売りのお兄さん、正装して気合を込めて出発。

でも、お兄さんは広州のヒトだから、北京はちょっと遠い。

なんとお兄さんは、試験の開始時間に間に合わなかったのでした。


広い広い紫禁城の、試験会場の保和殿の前で、呆然と立ち尽くすお兄さん。

日は傾き、頭上ではカラスが、アホーアホー。


そこをたまたま通りかかった王爺(王府の職員さん)が、「おや、これをどうぞ」と気の毒そうに提灯を1つ置いていきました。

まあ、科挙は過酷ですから、試験中におかしくなっちゃうヤツはよく出て来るわけです。


夕焼けの中、立ち尽くしたままうなだれるお兄さん。

ふらふらとした手つきで懐から筆を出し、

やおら空を見上げて、口をきりりと引き結び、

お兄さんの視線の先には、提灯が1個。


お兄さんは渾身の気迫をこめて、提灯に書き付けた。


『猪肉、猪肝、猪腸粉』


そうして、お兄さんは夕闇のせまる夕暮れのなかを、夕日に向かって駆けてゆきました。

なんとなく、紫禁城で西に向かって走ったら、外に出られないような気もするんですが。


殿試の主管が保和殿の玄関で、地べたにぽつんと置いてある提灯を見つけて、口をあんぐり。

なぜか、「猪肉、猪肝、猪腸粉」なんて書き付けてある。

これは、いったい何だろう?

でもこの提灯は正しく王府の物、これにはきっと何か深い事情が有るに違いない、ここはひとつ、

殿試の主管、忖度して答案を代筆。

お兄さん、科挙試験の殿試合格。


肉売りの仲間が、お兄さんに尋ねます。


「あんな難関の試験を3度も突破、いったいどうやったのだ?」


肉売りのお兄さんはへらへら笑いながら、


「猪肉、猪肝、猪腸粉」





広州に、状元及第粥という豚モツのお粥があって、これに掛けた笑話です。

科挙に合格出来るという触れ込みで、日本では受験シーズンのトンカツにあたります。

替え玉受験に、数々のカンニングテクニックに、試験問題の漏洩、試験管の忖度。

科挙には不正も多かったですから、それを揶揄しているのかもしれません。




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